種自由を観てきて、32歳男子はやっと喉につかえ続けていた骨が取れた

僕ら世代にとってはガンダムSEEDはファーストだった。

これは公式側が狙った「新世代のファースト」が狙い通り刺さったという以上の意味で、僕ら世代にとってはガンダムに対する原初体験だった。のちに様々なガンダム作品に触れることで粗やヒロイック過ぎるガンダムという事に気づくのだが、それでも無碍にできないのが僕らにとってのSEED(以下種)という作品である。

そしてそんな僕らに呪いを残したのが続編ガンダムSEED DESTINY(以下種運)である。

後世他媒体やスパロボなどの参戦作品で多少のフォローがなされ、当時を知らない人ほど悪く言う人が少なくないように思える種運だが当時リアルタイムで観た少年少女たちはそれなりに不満を覚えたはずである。

破綻していくストーリー、ストーリーのために奇天烈な言動をする壊れたキャラクターたち、ありえない頻度で挟まる総集回、多用されるバンク…etc

第1話のワクワク感は正直歴代ガンダムでもトップクラスだっただけにその落胆振りはすごかった。種は擁護できても種運は擁護できない。僕はそんな風に思いながら成長した。

特に僕が不満に思っていたのは種運のキラとラクスだった。突然現れて天災かのように戦況をかき乱し、その行いが全て肯定されていくストーリー。神に愛されている、というかまるで神そのもの。種ではまだ悩みながら人間臭く不満を口にもしながら、それでも優しさゆえに戦場を進まなければいけない人間臭さがあったキラだったのに、達観極まり常時賢者モードみたいな…。

とにかく僕ら世代は大なり小なり種運に呪いをかけられたと思う。一生このまま憎み続けなければいけない呪いに。

 

 

 

 

 

 

そして、まさかの2024年に公開された劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(以下種自由)」。劇場版制作決定の報が出たのは種運終了すぐだったように思うがその後全く音沙汰なし。リップサービスだったんだなと自分を納得させ、もはや自虐ネタの一つと化していた劇場版が本当に公開されるだなんて思ってもみなかった。

当時呪いにかけられた少年少女たちは正直期待をせずに怖いもの見たさで公開日を迎えたように思う。もう種運の時のように期待して落とされたくなかったのだ。

しかし実際に見られたSNSの反応は、あの頃の呪いを浄化され成仏していくオタクたちだった。

僕も観に行くつもりではあったけど、そんな反応を見せられると一刻も早く観たくなってしまう。

そして昨日、遂にそれを観たのだ。

以下、ネタバレを含みます。公式からバンバンネタバレされてる現状ですが、それでも出来るだけ情報を入れずに観に行ってもらいたいので、観てない方はここでバックしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前述したように、僕が種運で一番不満に思っていたキラとラクスであるが、彼らが神から人に落とされたように思った。というか、種の時のような苦悩する一人の人間としてちゃんとスポットライトが当たっていた。種からリアルタイムで見てきた僕らにはそれが嬉しかった。好きな人ひとり、気持ちが分からない、すれ違う。それに悩む。それで良いんだよ。だって彼らは戦場の神様でなく、一人の若者だもん。好きな人で悩んで当たり前。

種自由は愛の物語だった。それは正直種の頃からずっとそうだった。この点に関して、おそらく僕らより上の世代のガンダム好きな人は難色を示す事だろう。でも、あなた達が宇宙世紀に刷り込みされ、それを特別に大事にしてるように、僕たちはこのコズミックイラが初めて見た親で、だからこれをくだらないと思えるのと同時にこれをずっと見たかったとも思うんだ。

自分の武器は「ラクスの愛」だと言えるキラ。めちゃくちゃくだらないけど、僕はすごい好きだよ。キラはアムロにならなくていい。好きな人で思い悩むのだってキラらしさじゃん。

映画のラストで2人が裸になって海岸で立つカット、種シリーズの謎に裸シルエットのセルフオマージュのファンサービスであると共に、彼らが立場や生まれを気にすることなくただの一人ひとりとして向き合えるという意味も見て取れて、素直に泣いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

個人的にはキラとラクスの部分で十分満足に値するんだけど、語らなければなるまい?

これはロボットアニメなのだから、ロボットの事を。

事前公開されてたライジングフリーダムが個人的にかなり刺さるデザインだったのでそれだけでめちゃくちゃ期待してたんだけど、出てくるMSが悉く「これこれー!」と言わされた。かなり立体物欲しい。

これに関しては順番に語らせて?

 

まずライジングフリーダム。映画観るとやられメカ感あるけど、活躍シーン十分あったし、やっぱ何よりビジュアルが好き。顔が特に好き。特典のフィルムがライフリの顔どアップだったので大当たり。ライフリはプラモ買います。

 

次にデスティニーspec2。デスティニーは発展機じゃなくて中身バージョンアップさせただけかぁ、と思ったけどシンが嬉しそうだったので満点です。僕が好きな漫画のDesireでシンがデスティニーに抱いている特別な感情がこれでもかと表現されてたので、ただのデスティニーである事がシンにとってどれだけ大事か分かったのでもう後方腕組み面。まさにシンにとっても「必要だから愛したのではなく、愛したから必要」だった機体なんだなぁ。

あと、少し地味になったカラーリングだけどSNSで「レジェンドのカラーリングに酷似している」という投稿があって泣いた。僕はそういうのに弱いオタク。

 

続いてインパルスspec2。一番パイロットのミスリードを誘った機体だと思うけど、シンの乗るデスティニーの隣にルナが駆るインパルスってのはやっぱ良いね。公開前に公表されたフォースはあんま変わり映えしなくてちょっとなんだかなぁと思ってたんだけど、ブラストのカラーリングが完全に刺さった。今回の映画で一番立体物が欲しい機体。

元々インパルスが好きって事と、シルエットが変わるとカラーリングも変わるってところがすごい好きなんだけど、今回のブラストのカラーはドンピシャ。あと、ソードも良かった。まさかの赤一色で完全にルナマリアカラー。もはや擦られ過ぎてる「ルナは本来射撃より格闘の方が得意なのに与えられた専用機が射撃機」というネタを、格闘特化のソードインパルスに専用カラーを与えてくれたのはあまりにも分かってる。

フォースは現状購入を迷ってるけど、ソードとブラストがプラモ出たら迷わず買う。あわよくばRGで出てくれまいか。

 

あとこれは語らざるをえまい、デュエルとバスターの発展機。正直種運放送当時、「流石に最終決戦にはイザークディアッカがデュエルとバスターに乗ってきてくれるはず!」という淡い幻想をぶち壊されて20年、まさかあの頃の幻想をこうして拝めるとは思わなかった。しかもデュエルはブリッツ要素も継承しての登場。イザークとニコルがそこまで懇意だったという記憶は自分には無いのだが、そうは言っても同期だしちゃんと思うところがあったんだな。このデュエルバスターの登場も成仏に一役買っているのは間違いない。

 

ズゴックはもうズルかった。映画館で吹き出すって経験は後にも先にも無いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にたくさん語ることのできる、はちゃめちゃお祭り作品だった。数多くの亡霊が成仏できたことも納得。

粗が目立つってのは最早種シリーズのディスとしては検討外れになりつつある気がする。それすら楽しめるかどうかでこの作品の評価が変わるんじゃないかな?

あと、アルター使いことアコードがキラを失敗作呼ばわりしてて、俺の脳内のカナードが絶叫してた。以上。